前回、「欧州におけるワクチン供給が滞っている現在、日本は大丈夫か?」というような主旨の記事を書いたばかりだが、全くもってタイムリーである。加藤官房長官は1月28日の記者会見で、「英アストロゼネカのワクチンを日本国内で生産予定」というニュースを発表した。
日本政府とアストロゼネカは、1億2000万回分の新型コロナウィルスのワクチン供給で締結している。うち、3000万回分は3月までに輸入見込みであり、残りは9000万回分となる。この残り分を国内生産で賄いたいという思惑なのだろう。
アストロゼネカは、日本の医療メーカーにワクチン製造を委託しているという。現在このワクチンは、臨床試験中であり厚生労働省からの認可が下りればすぐにでも、生産開始ということらしい。
アストロゼネカはイギリスの製薬会社だ。ワクチン供給に関して、輸送、輸入などの手間がかかるため、こうした事項も考慮し、日本生産に踏み切ったのだろう。日本国内生産を受け持つのは、兵庫県芦屋市のJCRファ-マ。ワクチン生産の実績こそないが、生産に必要な関連技術をもっている会社である。JCRファーマは、アストロゼネカのワクチン原液を製造、製品化に関しては、第一三共(東京)、KMバイオロジクス(熊本)と共に強力することになっている。
日本政府は、米ファイザー、モデルナとも契約を結んでいるが、アストロゼネカのワクチンが国内生産されるようになれば、ワクチン需要の未来も明るくなってくる。アストロゼネカのワクチンは、他社ワクチンに比べ、通常温度(2~8度)保存が可能であり、数の面でも管理面でも安定供給が見込めるのではないだろうか。
いくら日本政府が契約しているとはいえ、欧州のようになっては困る。日本国内生産には生産設備強化の補助金を使用しながら対応していくという。パンデミックに備えて、国内生産ワクチンは大変に重要な役割をはたしてくれることだろう。これを機に生産体制を整えて、有事に対応できる枠組みや流れを作っていってほしい。
米ファイザーのワクチンが、アフリカのコロナ変種株への有効性もあるとかないとかいうニュースも流れている。2021年になりコロナパンデミックの1年が経過、どうやらやっとそのコントロールがはじまったという感じだ。ワクチンの明るいニュースに反して、今夏のオリンピック開催はやはり黙々と進められている。7月までの数カ月で、国内生産が始まるというこのワクチンで、果たしてコロナがコントロールできるようになるのだろうか?
最近では、マスコミや感染者数によって、国民の意識操作をしているという意見も良く耳にするが、いずれにせよ、「移動」することに「感染」のリスクはつきものであり、移動は控えたほうが良いのは明らかだろう。ワクチンの明るい未来が見えてきた矢先に、旧正月に向けての日本中国間の航空便開始、夏のオリンピックでの選手や観客の来日など、頭の痛い問題は多々控えている。人間は自分の力を過大評価しないことだ。