南米チリのサンディエゴ空港では、麻薬捜査犬ならぬコロナ探知犬が現在任務を遂行中だ。ゴールデンレトリバーとラブラドールレトリバー数頭で編成されているコロナ探知犬チームは、赤十字のついた緑のジャケットを着用。「バイオディテクター」として任務に当たっている。
フィンランド・ヘルシンキのヴァンター国際空港では、今年9月から「コロナ探知犬」の実証実験が行われている。通常のPCR検査ではなく、臭いでコロナを識別しようという試みだ。初期報告では、探知結果も上々で旅行客にも評判が良いということだ。フィンランド以外にもヨーロッパや中東では、コロナ探知犬の訓練や実証検査を行っているところが多い。
12月頭に発表された、フランスとレバノンの合同研究では、爆弾探知犬、捜索救助犬、結腸がん探知犬の14匹が実験に参加した。研究テストでは、パリとベイルートの病院に入院している患者の脇汗を使って、臭い検査が行われた。成功率は76~100%の確立。結腸がん探知犬は100%の成功率だったそうだ。結腸がん探知犬にいたっては、検査で陰性とされていた患者2名を注視し、マークし続けていた。その結果、その後の検査で、この患者2名は陽性と判断されたそうである。
犬の嗅覚を使ったなにかの捜索や探知は今にはじまったことではない。研究に参加した爆弾探知犬、捜索救助犬など、災害時には欠かせない存在だ。犬の嗅覚の素晴らしさは、周知のところ。ざっと調べたところでも、「犬の嗅覚は人の1億倍」とも言われていたから驚いた。臭いの種類によって差があるようだが、刺激臭だと1億倍は感知するそうだ。1億はピンとこないとしても、1万倍とか100万倍とも言われているので、いずれにせよ人間には分かり得ない「臭い」を嗅ぎ当てる、嗅ぎ分けることは確かであり、お手の物のはずだ。
そして、病気には「病臭」といわれる、その病気特有の臭いがある。まさにその臭いから命名された「メープルシロップ尿病」というものさえあるほど。これは遺伝病で、通常なら分解される成分を体内にためてしまうため、独特な甘い香りがしてくるのだ。人間では嗅ぎ取れない病気の香り、犬が嗅いでくれたらとても便利ではある。
フィンランドのヘルシンキ空港で行われている検査は、乗客の肌を拭いたシートを犬の前に置くだけだ。何ごともなく陰性であれば、犬は素通り。陽性ならばシートに反応してハンドラー(リードを持つ人)に教える。
チリのサンディエゴ空港では、旅行客は首と手首をガーゼで拭いて、犬のいる場所に移動し、探知する。いずれにせよ、「犬が反応すれば陽性」という即時判断ができ、非常に簡単で、唾液や鼻孔の粘膜をすくいとるPCR検査に比べれば、検査するほうもとても楽になる。しかも、コロナ探知率はかなり高い。
チリ国家警察とチリカトリック大学では、共同で7月より養成研修を開始していた。フィンランドでも9月から実習実験開始。人類の一番のパートナーとも言われる犬の能力を最大限に使用した探知犬。爆弾や麻薬、がんなど、現在でも活躍しているのだから、コロナ探知犬が世界各国で出現、認知されるのは、もう少しのことだろう。今後のコロナ探知犬の活躍に期待したい。